デザイン系専門学校の先生たちとディスカッション

↑Salone Internazionale del Mobile di Milano 2006
先日、あるデザイン系の専門学校(以前僕が非常勤講師のオファーもらった学校)の先生達と食事する機会がありました。親睦会みたいな感じでしたが、この学校と関わりのあるデザイン実務者(デザイナー)を数人招いて、デザインの学生育成についての意見交換みたいなことをしてきたのです。僕にとっても、これからどんな人たちをデザイナーとして受け入れて育てていくかは、自分にも関わってくるのでかなり真剣にディスカッションしてきました。その中で、感じた事、思った事をブログで書く約束をしてしまったので(笑)書いてみようと思います・・・続きは下のmoreで
日本においてのデザイナーの育成プロセスは、まず教育機関(デザイン専門科高校、デザイン系専門学校、デザイン系の大学)で基礎レベル的な教育を施し、企業に就職してから実践的な実務を鍛える事で成り立っています。日本の場合、世界的に観て特殊なのは企業内デザイナーの数の多さ(インハウスデザイナー)があり、インハウスの環境がデザイナーの育成に貢献してきた訳です。そのインハウスの中から能力を備えた人たちが独立し、今度は実務者として後進の指導も行い2元的に循環するのが特徴だったとも言えます。
ところが、最近の社会情勢は新人を教育して行く方向から、プロとして活動できる可能性を持った人を、必要な時に起用する(もしくは採用する)方向にシフトしています。派遣が端的な例ですが、雇用の形態が明らかに変わっていて企業やデザイン事業所が新人を育てて行く気風を失いつつあります。今回の意見交換でもこの部分を指摘されている先生たちが非常に多かったですが、社会のマインドが企業内デザイナーを育てにくくなっている感じがするのです。
僕は、自分の経験(専門学校を卒業→イタリアのポリテクニークに留学)から思った事は、日本の専門学校や大学は「良い就職先に卒業生を送り込む事」に優先順位を置いていて、イタリアの場合は「デザインの実務者として高い能力を備える事」に優先順位を置いている違いがあります。日本に限らず、本来社会が必要としているのは「ビジネスとしてのデザイン」を情緒的に解決できるデザイナーを求めているはずです。教育機関側が「企業やデザイン事業所が実務を教える」事を前提にしてしまっている今のプログラムを続けると、今後大きなズレにつながって行くような気がするのです。
「デザインの実務者として高い能力を備える事」とは何か?となりますが、イタリアでの実例を簡単に言うと大学4年間で行う基礎教育の他にワークショップを通じた活動で「デザイン+ビジネス+コンストラクトを共同作業で実務の仮想シュミレーション」を行ったり、契約や著作、デザインビジネスで必要な交渉などもカリキュラムに入っています。イタリアに限らずヨーロッパのデザイン系の大学やドムスアカデミーのような専門学校でもかなり細部までプログラム化されていて、それを専攻別にチョイスできたりします。一般教養に対してのプログラムも重視されていて、社会、経済、文化、民族への関心を持つ事で鋭い洞察力を養えます。
こうやって考えてみると、やはり日本のデザイン教育機関は、基礎教育で留まっていてヨーロッパの学校と比べるとカルチャースクールのように見えてしまうのです。少子化が進行している訳ですから、学校側も学生に対して「魅力的なプログラム」を組みより多くの学生を確保する必要があるのも理解できます。でも実践的な側面から考えると学生が好む好まないに関わらず広義に渡ってデザインプロセスを勉強する機会が必要で「造形的な部分だけを鍛えている」今の現状だとかなり危機的な状況になるように思えるのです。専門学校の2年と大学の4年間だけで全てを賄うには無理がありますが、大学院やアップデートプログラムのようなシステムを活用すればより専門的に履修できるはずです。